OBON ソサエティ
遺霊品とは
第二次世界大戦で行方不明になった日本兵の数は、112万人に上ります。なぜこんなに多くが行方不明のままなのでしょうか。
戦争初期においては日米両軍ともに自国の戦没者の収容をしていました。
米軍は戦場に墓地を作っていました。
日本兵の遺体は火葬され、遺骨は白木の箱に入れられて国元に戻り
母や妻へ厳かに引き渡されていました。
1945年9月2日、日本は降伏文書に調印し戦争は終わりました。
米軍の戦没者収容はすでに本格化していましたが、作業を円滑に進めるため、米議会は1億9100万ドルの追加予算を充てました。この取り組みは「墳墓登録事業」と呼ばれていました。
1万3千人以上が動員され、北アフリカやドイツ、フランス、ベルギー、硫黄島、サイパンなど世界各国の戦場を網羅しました。1946年〜1951年までの間、彼らの懸命な働きにより28万柱もの遺骨が収容されました。
しかし、日本の戦没者には違う運命が待っていました。
降伏文書の調印から一週間、日本では大勢の軍幹部や政治家、外交官、経営者が拘束されました。
戦争犯罪に問われた日本人は30人足らずでしたが
逮捕された日本人は約5700人に達しました。
彼らの裁判は1951年まで、6年間も続きました。
占領軍にとって、日本軍指導部の投獄は、正義のために必要だと思われたのです。
しかし下士官や政治家、経営者を拘束する理由はそれほど明確ではありませんでした。おそらく米国側には、占領を完璧に成し遂げるため日本社会を徹底的に再教育する思惑があったと考えられます。
理由はいずれにしても結果として、未帰還兵の捜索・遺骨収容を取り仕切るリーダーが日本に不在となってしまいました。ましてや費用を賄う財源もありませんでした。
ようやく占領が終わり日本に主権が戻った頃には、時の経過による損傷や風化で多くの戦没者の遺骨は消失してしまったのです。
戦場は深いジャングルに覆われ、野ざらしの骨は熱帯気候や台風、砂嵐、豪雨により粉々になってしまいました。
多くの労働や資金を投入し探しても、遺骨を受け取れる遺族はごくわずかです。
幸い、日本には特有な文化がありました。
出征する際、その日本兵を大切に思う人々によって「武運長久」の思いが込められた言葉や署名が記された日章旗を携えていきました。
これは、「寄せ書き日の丸」といいます。
寄せ書き日の丸は一見、単に黒い筆文字に埋め尽くされた国旗と見て取れます。
書かれているのは家族や親戚、隣人、友人などの署名です。
一つ一つの筆跡が、一枚一枚すべてを違うものにしています。
これらの旗は指紋のように、まったく同じものは一つもありません。
熟練した調査者には、手書き文字は豊富な情報源です。
法人類学者がDNA情報を解読するがごとく、OBONソサエティの調査者らは、寄せ書き日の丸に載せられている情報を読み解いていきます。
記された情報を読み解くことで、OBONソサエティは寄せ書き日の丸の元の持ち主を正確に特定することができます。
世界人口が80億人を突破した今日でも、DNA鑑定よりも早く、低コストで、正確に、遺族を探し出します。
さらに寄せ書き日の丸の返還により、遺族は喜びを抱くと同時に、心に終止符を打つことができるのです。
OBONソサエティは、遺骨を受け取ったアメリカ人遺族について、大規模な調査を行いました。
受け取る瞬間の反応を調査し、日本人遺族の反応と比較したのです。
その時アメリカ人遺族が発する言葉は、日本人遺族が寄せ書き日の丸を受け取る時と同じでした。
反応も安堵の気持ちも全く同様なのです。
それも当然のことでしょう。すべての人には、家族を愛するという共通点があります。
跡形もなく誰かが行方不明となった時、残された家族は絆が断たれる大きな悲しみを抱くものです。
遺族はだれも、居なくなった家族を取り戻したいと切実に願います。
時を経ても遺骨や寄せ書き日の丸が返還されれば、失った家族がついに帰ってきた、と遺族の念願が叶えられたことになるのでしょう。
以上のことから、寄せ書き日の丸のような遺品について、
持ち主の魂を宿しているという判断のもと、
私たちは「遺霊品」という呼称で表現いたします。
アメリカ人が所有する「寄せ書き日の丸:遺霊品」の数は、5万枚と推定されています。そのうち、数千枚はアメリカ政府の管轄下にあります。
2年後は戦後80年の節目の年です
戦争で父や兄弟を失い、その悲しみを一生背負ってきた日本人は、何百万人もいます。
私たちは、次の節目までに一人でも多くのご遺族へ「寄せ書き日の丸:遺霊品」を返還できるよう、そしてこの返還を通して、過去の悲しみを乗り越え「平和」「友好」「和解」がさらに促進されるよう、これからも尽力して参ります。
OBONソサエティの詳細・連絡先は下記をご確認ください:
OBON SOCIETY
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