返還された日章旗を手にする遺族の根岸信明さん(左)と小林哲也・熊谷市長=埼玉県の熊谷市役所で2022年5月13日午前9時31分、中山信撮影
太平洋戦争が終わる2カ月前の1945年6月、フィリピンのルソン島で23歳で戦死した元日本陸軍兵長の根岸愛三郎さん=旧大里郡吉見村(現埼玉県熊谷市)出身=が戦地に持参した日章旗が13日、77年ぶりに遺族の元に戻った。
「祈武運長久」などの文字とともに、家族や地域の人々ら約80人が名前を寄せ書きした日章旗は元米兵が戦地から持ち帰り、テネシー州在住の米国人が大切に保管していた。保管者が戦没者の遺留品を日本の遺族に返還する活動をしている米国の非営利団体「OBONソサエティ」に返還を依頼。日本国内の遺族会組織が調査した結果、根岸さんの弟の子で、実家を継いでいる元熊谷市職員の根岸信明さん(71)らの遺族が判明した。
13日に熊谷市役所であった返還式では栗原健昇・同市遺族連合会会長から根岸さんに横約1メートル、縦約70センチの日章旗が手渡された。栗原会長は「保管していた方は『この旗の返還によって皆様方のお心が少しでも慰められるよう望んでいます』とコメントを寄せています。80年近くたっても戦後はまだ終わっていないという気がします」とあいさつした。
根岸愛三郎さんは妻と2人の娘を残して亡くなった。おいの根岸信明さんは「話を聞いた時は大変驚きました。出征した伯父、寄せ書きをした人たちの気持ちはどうだったのか。戦争の悲惨さを感じます。供養のうえ、後世に引き継ぐ資料として市立図書館に寄贈したい」と話した。
https://mainichi.jp/articles/20220513/k00/00m/040/124000c?fbclid=IwAR1HbVj0pEyizeTcHJclA0xdkdjM-ok-PLGCqFfanIoptaLCAURC_fil4Cw